4、仙台泉の専業パチプロたち
『仙台泉、夜の業(ごう)Ⅱ ──闇にささやく声』
マルハン仙台泉。
21SEIKI仙台泉。
パラディソ1000泉店。
パチンコスーパーラッキー泉店。
仙台泉区には、専業と軍団をまかなうだけの優良店が揃っている。
この街では、毎日が静かな戦場だ。
設定差と期待値のあいだで、人が喰い合い、
勝者と敗者が入れ替わる。
釘が微かに動くだけで、運命が変わる。
そんな街の夜、
闇掲示板(爆サイ)では別の戦いが続いている。
そこでは、ステーキが売っていないと愚痴る者がいる。
和牛と外国産の違いを熱弁しながら、
まるで人生の格差を嘆く(なげく)ようにキーボードを叩く。
他人の年収を語り、
「大企業こそ正義」と唱える声がある。
公務員を称え、福利厚生を比べ、
誰かの職業を侮辱する者もいる。
笑いながら他人を見下ろし、
自分の孤独を誤魔化すように。
だが、そこにパチスロの話はない。
もう誰も「台」の話をしない。
勝率も設定も消え、
残るのは自己防衛の言葉と、
誰かを叩くことでしか呼吸できない魂たちだ。
この街で「喰う・喰われる」とは、
出玉の話だけではない。
承認を求め、誰かの価値を奪い合う。
それもまた、泉の夜に流れるもうひとつの血脈だ。
心配するな──
最悪の事態にはならない。
そんな誰かの囁きが、
湿った風の中で、ゆっくりと溶けていく。
ネオンが雨を切り裂き、
遠くのホールの看板が滲(にじむ)む。
誰もが「勝ちたい」と言いながら、
本当は「認められたい」と願っている。
仙台泉の夜は、今日も廻る。
専業たちが眠りにつくころ、
闇掲示板ではまだ、誰かが誰かを嘲(あざけ)っている。
その指先の震えだけが、
生きている証のように光っていた。
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿
コメお願いします