新潟の専業パチプロ日記 その1
長岡の夏、絶滅危惧種のパチプロ
時は夏。
蝉の声がうるさいほど響く午後、俺は長岡市をせめていた。
40代前半。もう年季の入ったパチプロだっけさ。
誰も見なくなった釘を見て、甘い台を探して打つ。
いわゆる「平打ち」。効率もなけりゃ、華もねぇ。
けどな、これが俺のやり方なんだて。
いまどきはスマホでデータ見て、朝の抽選勝負。
ハイエナ、設定狙い、SNS連携。
俺みたいな古いやり方なんて、もう絶滅危惧種みてぇなもんだ。
それでも、ホールの空気、玉の流れる音、あの「間(ま)」が好きなんだよね。
夜になると、長町の繁華街に出る。
汗ばんだシャツのまま、居酒屋でちまちまと日本酒をすする。
ぬる燗がいい。焼き鳥のたれの香りが、夏の夜に混ざっていく。
ひと息ついたら、行きつけのスナックへ。
安いボトルが棚の奥に置いてあって、名前のラベルが少し色あせてる。
それを見て、「まだ俺もここに居場所があるな」と思う。
その夜、珍しく新しい子が入ってきた。
二十歳そこそこ。まだ大学生らしい。
どこか垢抜けてないけど、笑うと妙に印象に残る顔。
ママが俺の方を見て、冗談めかして言った。
「この子ねぇ、パチンコに興味あるんだって。あんた、教えてあげなさいよ」
俺は笑ってグラスを回した。
「いやいや、教えたらこの子、人生狂うっけさ」
ママも笑う。
女の子は首をかしげながら言った。
「でも、なんか…打ってる人の顔、すごく真剣で、かっこよかったんです」
その言葉に、ちょっとだけ胸が熱くなった。
俺たちがやってきた「遊び」が、まだ誰かの目に新鮮に映る。
もう稼ぎなんて大したことない。
けど、ホールの光の中で過ごした時間は、確かに俺の青春だった。
その夜、店を出て、夜風を吸い込みながら思った。
――この街も、俺も、少しずつ古くなっていくんだな。
でも、それも悪くねぇ。
長岡の夏の空は、湿っぽくて、どこか優しい。
ネオンがにじみ、遠くで花火の音がした。
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